症例紹介
Blog シンプルで機能的。前歯インプラント治療
症例の背景
60歳代女性の患者さま。
「前歯の差し歯が取れてしまった」との主訴で来院されました。
差し歯は保険適用の メタルプラスチック冠(金属の土台にプラスチックを焼き付けたクラウン)。
その内部には メタルコア(土台となる金属の棒) が入っていましたが、根が折れてしまい、残念ながら 抜歯が適応 となりました。
このようなケースでは、入れ歯やブリッジという選択肢もありますが、審美性・機能性を考慮し、インプラント治療 を行うことになりました。
治療の流れ
1. 抜歯とソケットプリザベーション
抜歯と同時に、ソケットプリザベーション を行いました。
👉 これは、抜歯した穴に人工骨を入れて骨の高さや幅を守る方法です。
2. 治癒期間の確保
感染のリスクもあったため、あえて「抜歯即時埋入(抜歯と同時にインプラントを入れる方法)」は避け、2か月間の治癒期間 を取りました。
3. インプラント埋入と骨造成
治癒後にインプラントを埋入。
その際に骨の量が不足していたため、GBR(骨造成:骨を再生する処置) を同時に行いました。
4. 歯ぐきの整形(ロール法)
さらに、ロール法 という歯ぐきの厚みを増す処置を行い、厚みのある歯肉ラインを確保しました。
5. 仮歯 → 最終補綴
インプラントの安定を確認した後、仮歯を経て最終的にセラミッククラウンを装着しました。
見た目だけでなく、噛み合わせや機能も回復し、患者さまに大変満足いただけました。
治療のポイント
✅ 「安全でシンプル」を最優先に、無理に即時埋入を行わず、確実に治癒を待ったこと
✅ 骨と歯ぐきの再生処置を組み合わせ、長期的な安定と自然な見た目を重視したこと
✅ 仮歯の段階を丁寧に踏み、審美性と機能性を両立したこと
治療費用
約 700,000円(税抜)
内訳
・前歯インプラント治療 500,000円
・ガイドサージェリー(安全に埋入するための専用ガイド) 60,000円
・ソケットプリザベーション(抜歯部に人工骨を入れて土台を守る処置) 40,000円
・GBR法(骨を再生させる処置) 100,000円
※歯ぐきを厚くする処置(軟組織移植など)が必要な場合は、別途費用がかかります。
リスク・注意点
・治療後に腫れ・痛み・出血などが出ることがあります。
・個人差により、インプラントやセラミックが欠けたり緩む可能性があります。
・定期的なメンテナンスを怠ると、長期安定が難しくなります。
まとめ
前歯は「見た目」と「機能」の両方が問われる非常に重要な部位です。
今回の症例では、安全かつシンプルに、そして機能的で自然な仕上がりを実現することができました。
患者さまの「安心して笑えるようになった」という言葉が、私たちの最大の喜びです。
監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。