ブログ・症例紹介
Blog 歯の移植症例③
重度のむし歯で被せが外れて近所の歯医者を受診したところ抜歯の診断とインプラントを勧められ、歯の移植を希望されて当院を初診となった患者様です。
今回は、「利用されていない」健康な親知らずが存在していたため、親知らずを有効活用した「歯の移植」を適応しました。
治療前
30歳代男性
依頼内容:数年前に右下7番目の奥歯が虫歯で神経を取る治療と銀歯を被せた。数日前に銀歯が外れ、近所の歯医者さんを受診したところ、抜歯と診断されインプラントを勧められた。
ネットで調べたところ、親知らずの移植という選択肢があることを知り、当院初診となった.
レントゲンでは7番目の歯が重度のむし歯で、歯が残っていないことがわかります。歯ぐきの内部までむし歯(歯肉縁下う蝕)に進行すると歯を再治療することができなくなります.
この場合、治療の選択肢は抜歯を考えないといけません。
しかし、CTで確認したところ、右上に健康な親知らず存在しており、根の形歯湾曲していますが、移植に利用できる状態であると診断できました.
歯の移植にはメリット・デメリットともに存在しますが、今回はメリットが大きく上回ると判断しました。
特に患者様の年齢を考慮すると「次の治療を先延ばしにできる」ことは大きなメリットと言えます。移植した歯が術後何年健康に機能するかについては未だに不明確な部分も存在します.しかしながら,移植した歯が数年後に抜歯適応になってしまった際に,次のステップとしてインプラント等の治療法を選択することができます.
今回は、隣に健康な親知らず(8番目の奥歯)が存在し、利用されていない状態であったため、7番目の奥歯を抜歯する代わりに、この親知らずを移植して有効活用する治療が適応可能と判断しました。
どのように対応したかみていきましょう.
治療中
まずは移植手術を行います。
保存不可能と判断した7番目の奥歯を、周囲の組織を損傷しない様に丁寧に抜歯を行い周囲の炎症組織を掻爬しました.
続いて、親知らずをスムーズに埋入できるように、術前のシュミレーションを参考に慎重に穴を形成します。
手術後は、移植した歯と顎骨が接合するのに約1ヶ月待機し、移植した歯が安定していることを確認して、移植した歯に根管治療(歯の神経の治療)を行いました。
その後移植した歯の形を整え、口腔内スキャナというデジタル型取りでセラミックの被せ物を型取りしました。
このデジタル型取りは、従来の粘度の型取りと比較して、不快感が少なく、非常に精密で、セラミックを作成する場合非常に相性が良好です。
治療後
歯の移植を行なった後,かぶせ(セラミッククラウン)を製作して装着し治療を終了しました。
※患者様にご説明し,症例提示の同意をいただいた上で掲載しております.
リスク
手術後,痛みや違和感・出血・腫れなどが出る可能性があります.
歯の移植治療にはメリット・デメリットが存在します.担当医からの注意事項説明を充分に理解して頂くようお願いします.
セラミッククラウンが個人差により稀に欠けたり壊れる可能性があります.咬み合わせ・歯ぎしりの強い方は、破損防止のためにマウスピースをおすすめすることがあります.
治療期間
約3ヶ月〜6ヶ月
治療費用
約170,000/1本(税別)
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監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。