ブログ・症例紹介
Blog 骨の造成術⑵:骨の厚みを増やす(ブロック骨移植)
3年以上前に,右上の前歯の歯の根っこが折れてしまったことが原因で、かかりつけ歯科医院にて抜歯となりましたが,上の顎の骨がやせてしまい骨の厚みが少なく,インプラントは不可能と診断された患者様です.
抜歯後は入れ歯を使用している模様ですが,違和感が強く,インプラント治療を希望され治療を担当させて頂きました.
前歯を失うと患者様の生活の質を著しく低下させてしまいます.
治療前
70歳代男性
依頼内容:3年以上前に,右上123番目の前歯の歯の破折が原因で痛み,かかりつけ歯科医院で抜歯となった.抜歯後は入れ歯を作ってもらったが,違和感が強く使用できない.インプラントをしたいが,骨の厚みが少ないためインプラントは不可能と診断された.可能であればインプラントをしたい.
歯の根っこの破折による歯周炎(根尖性歯周炎)が原因で,右上の前から1,2,3番目の前歯を抜歯治療され,欠損している状態です.
患者様は取り外しの入れ歯を使用されているようですが,違和感が強く,インプラントをしたい希望がありました.
前医では,上顎の骨がやせて厚みが不足しているためインプラントは不可能と診断されましたが,患者様はインプラント治療を強く希望され,骨造成治療について希望をされご紹介をいただきました.
十分な術前の診査・診断を行ったところ,「骨」を作る骨造成治療を適応すれば患者様の希望通りインプラント治療は対応可能と判断しました.
どのように対応したかみていきましょう.
治療中
CTでシュミレーションを行なったところ,上の顎の骨はやせてしまい,骨の厚みが非常に少ない状況が予測されました.
一般的にインプラントは3.5〜4mm直径のネジ型の人工歯根ですので、インプラントを入れるためにはそれ以上の骨の厚みが必要となります.
今回は,「骨」を作る骨造成治療を適応し,インプラント治療を行いました.
術式は,ブロック骨移植術という骨造成術を併用しました.
ブロック骨移植術は,ご自身の顎の骨をブロック状に採取し、骨がやせてしまって厚みのない部分に移植し、骨を作る方法です。
歯ぐきを切開し骨を露出したところ,予想通り抜歯をした所の骨は凹んでいました.
まずご自身の顎の骨を採取します。今回は下の顎の奥から骨をブロック状に骨切りして採取しました。
採取したご自身の骨のブロックを、骨がやせている部分に合うように丁寧に形を整え、スクリューで動かないように固定します。
十分に粘膜を伸ばして,確実にかつ丁寧に縫合し,完全に傷口を閉鎖し手術を終了しました.
術後約6ヶ月間,骨の治りを待機した後,緑のラインで示すように骨がやせていた部分には厚みが回復していることがわかります。
再度CTで、十分に骨ができていることを確認しインプラント埋入手術を行いました。
歯茎を切開し骨を露出したところ,移植した骨はご自身の骨に同化しており、骨の厚みは回復していることが確認できます.最終的な被せ物の位置関係を考えてインプラントを入れました.
治療後
インプラント埋入手術+骨造成手術を行なった後,インプラント2次手術+歯ぐきの形成手術を行い,セラミッククラウンで治療しました
※患者様にご説明し,症例提示の同意をいただいた上で掲載しております.
リスク
手術後,痛みや違和感・出血・腫れなどが出る可能性があります.
インプラント治療は継続的なメインテナンスが不十分な場合,インプラントの歯周病(インプラント周囲炎)になるリスクが上がります.担当医からの注意事項説明を充分に理解して頂くようお願いします.
治療期間
約8ヶ月
治療費用
約¥300,000(税別)
費用内訳
●ブロック骨移植:¥300,000 /1ブロック(税別)
監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。