ブログ・症例紹介
Blog 歯周病について.よく頂くご質問Q&A
Contents
- 1 歯周病ってなんですか?
- 2 歯垢ってなんですか?
- 3 歯石ってなんですか?
- 4 歯石は歯ブラシで取れますか?
- 5 歯周病が進行したらどうなるんですか?
- 6 歯周病が全身の健康に関わるって本当ですか?
- 7 歯周病の対策ってどうすればいいんですか?
- 8 歯磨きは1日何回したらいいんですか?
- 9 電動ブラシって効果ありますか?
- 10 歯磨きすると血が出るんですが問題ありますか?
- 11 歯周病って治りますか?
- 12 歯周病対策にどれくらいのペースで歯医者に通院すれば良いですか?
- 13 歯周病は何歳から対策すればいいですか?
- 14 妊娠中に歯周病が悪化するんですか?
- 15 タバコは歯周病に関係ありますか?
- 16 歯周病は他の人にうつりますか?
- 17 歯周病に抗生物質は効果ありますか?
患者様からよく頂くご質問についてまとめました.
今回は歯周病について述べたいと思います.
歯周病ってなんですか?
歯周病は、歯と歯肉の周囲にある組織に炎症が起こり、歯を支える骨が破壊される病気のことです。
歯垢や歯石が原因となり、悪玉菌(歯周病菌)を放出することで炎症が起こります。初期の症状は歯肉の腫れや出血で、重度になると歯がグラグラして抜け落ちることもあります。
歯垢ってなんですか?
歯垢は、口腔内に生息する細菌が唾液や食べ物のかすなどの成分と混ざり合ってできる歯の表面や歯と歯茎の境目に付着した白っぽい水垢のようなヌメヌメした物質です。
歯垢には糞便と同等の大量の細菌が存在しており,磨き残しによって歯垢が歯の表面に付着すると、含まれる歯周病菌が歯周ポケットに蓄積し、歯肉の炎症を引き起こします。
歯石ってなんですか?
歯周病の原因になる歯石は、磨き残しである歯垢が長期間歯の表面に付着して蓄積し、硬くなったものです。
歯石は、口の中に存在する細菌や唾液の成分が混ざり合い、歯垢が硬化したもので、歯垢よりも強固で取り除きにくくなります。歯石が歯肉と歯の間(歯周ポケット)にたまると、歯石周囲にはさらに歯垢がたまりやすくなり、炎症を引き起こすことで歯周病が進行していく悪循環に陥ります。歯周病が進行して歯周ポケットが深くなると,さらに深い部分で歯石が蓄積し,物理的に歯石を除去することが難しくなり,例えて言うなら”雪だるま式”に悪くなっていきます.
歯石は歯ブラシで取れますか?
歯石は、歯ブラシで取り除くことはできません。歯石は歯垢が長期間歯の表面に付着し、硬くなったもので、歯ブラシだけでは除去することができません。
歯石は歯科医師・歯科衛生士が専用の器具を使って、専門的な歯周治療をすることで取り除きます。しかし,歯周ポケットが一定以上に進行すると,通常の器具では除去しきれないことがほとんどです.その場合は歯周外科という手術によって歯石を除去する歯周治療が適応になります.
初期の段階で定期的な歯科受診(メインテナンス)や歯周治療を受けることで、歯石の蓄積を予防し、口腔内の健康を維持することが”要領が良い”と言えます。
歯周病が進行したらどうなるんですか?
歯周病が進行すると、歯周組織(歯を支える骨)が破壊され、歯が支えられなくなり、最悪の場合、歯を失うことになります。
お年を召された時,失ってしまった際に最も後悔をされるのはお口の健康です.
また、歯周病の進行は、全身の健康にも影響を与えることがあります。歯周病の細菌が全身に広がることで、心臓病、脳卒中、糖尿病、妊娠の合併症などのリスクが高まるとされています。
歯周病が全身の健康に関わるって本当ですか?
歯周病は口腔内だけでなく、全身の健康にも影響を与えることが科学的に証明されています。
科学的根拠として,歯周病の細菌が、心臓病、脳卒中、糖尿病、妊娠の合併症など、全身の疾患と関連していると考えられています。また、歯周病が進行すると、歯を失うことで栄養不良や口腔内の機能障害(オーラルフレイル)が引き起こされることもあります。定期的な歯科受診や適切な歯科衛生指導によって、歯周病を予防することで、全身の健康維持にもつながります。
歯周病の対策ってどうすればいいんですか?
歯周病の対策は単純明快で、歯周病菌を放出する歯垢を除去すること(プラーコントロール)です.ご自身での適切な歯磨き(セルフケア)と定期的な歯科医院での歯周治療(プロフェッショナルケア)の両立が重要です。
もちろんセルフケアで毎日100%の歯垢除去を達成することができれば歯科医院に通院する必要もなくベストですが,現実的にはほぼ不可能です.歯ブラシのために1日のかなりの時間を使うことができれば可能かもしれませんが,はっきり言って日々の生活における歯磨き時間の優先順位にも限度があります.それは私たち歯科医師・歯科衛生士にとっても同じです.なので,私たち歯科医師・歯科衛生士はセルフケアの限界を理解したうえで,定期的にプロフェッショナルケアを受けることで”要領よく”歯周病ケアを行なっています.
歯磨きは1日何回したらいいんですか?
歯磨きは1日2回以上が理想的です。朝食後と寝る前がおすすめです。朝食後は、食事でついた酸を中和するため、また、夜寝る前は口の中が乾燥し、細菌の増殖が活発になるため、十分な歯磨きが必要です。
歯磨きは、2分以上時間をかけて、歯ブラシとフロス・歯間ブラシを使って、1本1本を意識して丁寧に行うようにしましょう。実は患者様ご本人が思っている以上に歯磨きに時間をかけていないことがほとんどです.個人的には,鏡の前で歯磨きを済ませるのではなく,TVをみながらなど「ながら磨き」をおすすめします.あるいは,タイマーでしっかりと2分測ったうえで歯磨きするなどして,丁寧な歯磨き習慣を心がけてください.
電動ブラシって効果ありますか?
一般的に、電動歯ブラシは手磨きよりも効果的とされています。
私も含めて基本的に現代人は皆面倒くさがりです.個人的には歯磨きは可能な限りシンプルにできるものが良いと考えています.テクノロジーは日々発展していますので,便利なものは有効に活用していきましょう.
電動歯ブラシは、ブラシの毛先が高速で振動することで、手磨きでは届きにくい歯の奥や歯茎の部分まで効率的に磨くことができます。また、最新の電動歯ブラシには、タイマーや圧力センサーなどの機能がついているものも多く、適切な磨き方をサポートしてくれるため、正しい歯磨きを習慣づけるのにも役立ちます。ただし、正しい使い方をしなければ効果は期待できませんので、使用方法については歯科医師・歯科衛生士に相談することをお勧めします。
歯磨きすると血が出るんですが問題ありますか?
歯磨きで血が出ることは、歯周病の初期症状の一つです。
歯周病は、歯垢・歯石の蓄積によって歯肉に炎症が起こり、歯肉が腫れたり出血したりします。歯周病の初期症状として、歯磨きで歯肉から血が出ることがあります。このような症状がある場合は、歯科医師の診断を受け、適切な治療を受けることが必要です。
歯周病って治りますか?
歯周病は、早期発見と適切な治療を行うことで、症状を改善させることができます。歯周病の初期段階であれば、歯磨きの改善や歯周治療によって症状を改善することができます。
進行した歯周病についても、歯科医院での歯周外科手術や歯周病でダメージを負った骨を再生させる歯周組織再生療法などにより症状を改善することが可能です。
歯周病対策にどれくらいのペースで歯医者に通院すれば良いですか?
人間ですから,常に完璧なセルフケアで100%の歯垢を除去することなど,はっきり言って歯科医師・歯科衛生士でも誰にもできません.ですから,歯周病の対策には,定期的に歯科医院へ通院しプロフェッショナルケアを受けることが非常に要領が良いと言えます。通院の頻度については、個人の状態によって異なりますが、一般的には3〜4ヶ月に一度,最低でも6ヶ月〜1年に1回の歯科医院受診をおすすめします。
歯科医師・歯科衛生士が口腔内の状態をチェックし、必要に応じて歯ブラシ指導やクリーニング・歯石除去などの歯周治療を行います。特に,歯磨きや口腔ケアについてのアドバイスを受けることで,定期的にセルフケアのモチベーションを維持することが最も大切と考えます。
歯周病は何歳から対策すればいいですか?
歯周病の対策は、永久歯が生え揃ってから可能な限り早期から始めることが重要です。歯周病は加齢とともに進行しやすくなります。繰り返しますが,お年を召された時に,失っってしまった際に最も後悔をされるのはお口の健康です.
年齢が上がるにつれて歯周病で歯を失ってしまう人が増える傾向にあります。加齢によって歯を支える歯槽骨の量や質が低下するため、歯周病が進行しやすくなります。しかし、年齢による歯周病の進行を遅らせることはできます。適切な歯磨きや歯科検診を定期的に受けること、禁煙や健康的な食生活を心がけることが大切です。
妊娠中に歯周病が悪化するんですか?
妊婦は歯周病が悪化しやすいとされています。
妊娠中にホルモンバランスが変化することで、歯ぐきが腫れたり、炎症を起こしやすくなります。また、妊娠中には免疫力が低下するため、口内の細菌感染に対する抵抗力が弱くなることも歯周病を悪化させる要因となります。そのため、妊娠中は歯磨きや歯科検診をしっかり行うことが大切です。また、妊娠前から歯周病の治療を受けておくことも推奨されています。
タバコは歯周病に関係ありますか?
タバコは歯周病を悪化させる原因の1つです。
タバコに含まれる有害物質が歯周病の原因菌を繁殖させ、炎症を引き起こすため、歯周病を進行させることがあります。また、タバコにより歯茎の血行が悪くなるため、歯周病の初期症状である出血が出にくくなることもあり,ご本人が気付かないうちに重度に進行していることが多々あります。さらに、タバコを吸うと口内が乾燥するため、唾液の分泌が減少し、細菌の繁殖が促進されることもあります。したがって、歯周病を予防するためには、禁煙が重要です。
歯周病は他の人にうつりますか?
口腔内の細菌は、口腔内の接触によって他の人に移ることがあります。
例えば、唾液の接触、キス、食器や歯ブラシなどを共有することで、口腔内の細菌が他の人に移る可能性があります。このため、特に家族やカップルなど、同じ生活空間を共有する人々は、口腔内の清潔を保つことが重要です。歯周病の進行度合いや感染力は個人差がありますが、口腔内の細菌の共有を避け、適切な歯磨きや口内清掃を行うことで、口腔内の健康を維持し、他人への細菌感染のリスクを減らすことができます。
歯周病に抗生物質は効果ありますか?
歯周病は、原因になる悪玉菌(歯周病菌)を含む歯垢や歯石を取り除くことが最も効果的かつ唯一の治療法です.
しかし,一定程度進行してしまって急性症状が出ている場合には、抗菌薬の使用が考慮されることもあります。抗菌薬は、炎症を起こしている細菌を殺菌することで、歯周病の急性化を抑える効果があります。ただし、抗菌薬は適切なタイミングで、適切な方法で使用する必要があります。そのため、歯科医師の指導のもと、適切な治療を受けるようにしましょう。
監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。