ブログ・症例紹介
Blog 前歯インプラント治療⑶(骨がないとき)
転倒して前歯の根っこが折れて抜歯となってしまった患者様、両隣の健康な歯を削ってブリッジにするのは避けたい希望があり、インプラント治療を希望され治療を担当させて頂きました。
前歯を失うと患者様の生活の質を著しく低下させてしまいます。
治療前
50歳代女性
依頼内容:転倒して前歯が折れてしまった。両隣の健康な歯を削ってブリッジにするのは避けたいので、インプラントをしたい。
赤の点線が歯が破折しているラインになります
転倒による外傷で前歯を受傷し、右上・左上の1番目の歯が根っこ中で折れてしまっており炎症が起こっている状態でした。残念ながら抜歯が必要な状態です。
充分な術前の診査・診断を行ったところ、「骨」を作る骨造成治療を適応すれば患者様の希望通りインプラント治療は対応可能と判断しました。
まずは抜歯を行い、歯ぐきの治りを待ってインプラント埋入術+骨造成手術の計画としました。
どのように対応したかみていきましょう。
治療中
周囲の組織を損傷しない様に丁寧に抜歯を行なったところ、歯の根っこが破折していることに伴う炎症によって部分的に骨が陥没していました。
本来は緑のラインに沿って骨が存在していたのですが、赤の部分だけ骨がやせてなくなってしまっています。
CTでシュミレーションを行なったところ、歯茎の下にある骨が部分的になくなっていることが予測されました。
骨がないとインプラントを入れることができませんが、今回は「骨」を作る骨造成治療を適応し、インプラント治療を行いました。
歯茎を切開し骨を露出したところ、予想通り抜歯をした所は骨がやせていました。
最終的な被せ物の位置関係を考えてインプラントを入れたあと、骨が薄い部分的を人工骨で補っていきます。白い顆粒状のものが人工骨になります。
人工骨を丁寧に補い、メンブレンという人工の膜で保護していきます。
前歯のインプラント治療は、長期的にインプラントを守るためにもしっかりと骨を作ることが重要です。しっかりと骨を作ることのできる、溶けない(非吸収性)チタン性の膜を使用した術式を行いました。
十分に粘膜を伸ばして、確実にかつ丁寧に縫合し、完全に傷口を閉鎖し手術を終了しました。確実に傷口の閉鎖を行えるかどうかがこの手術の大事なポイントになります。
手術の術前・術後を比較すると、術前は青のラインで示すように歯ぐきが凹んでいますが、術後は緑のラインで示すように「骨」を作る骨造成手術によって歯ぐきのラインが回復しているのがわかります。
術後約4ヶ月間、骨の治りとインプラントがくっつくことを待機した後、チタン性の膜を除去すると、インプラントの周りに十分な骨ができていることがわかります。
インプラントの頭を出すためのインプラント2次手術に加えて、さらに歯ぐき厚みを確保するために歯ぐきの形成術(上顎から歯ぐきの組織を移植してインプラント周りを補強する手術:結合組織移植術)を同時に行いました。
治療後
インプラント埋入手術+骨造成手術を行なった後、インプラント2次手術+歯ぐきの形成手術(結合組織移植術)を行い、オールセラミッククラウンで治療しました。
※患者様にご説明し、症例提示の同意をいただいた上で掲載しております。
リスク
手術後,痛みや違和感・出血・腫れなどが出る可能性があります.
インプラント治療は継続的なメインテナンスが不十分な場合,インプラントの歯周病(インプラント周囲炎)になるリスクが上がります.担当医からの注意事項説明を充分に理解して頂くようお願いします.
治療期間
約8ヶ月
治療費用
約¥1,170,000(税別)
費用内訳
●前歯インプラント費用(土台から被せ物まで含む):¥450,000 /2本(税別)
●GBR法(大):¥200,000 /1ブロック(税別)
●結合組織移植術:¥70,000 /1ブロック(税別)
監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。