ブログ・症例紹介
Blog 骨の造成術⑴:骨の厚みを増やす(サイナスリフト)
2,3年前に,右上の奥歯が歯の根っこの歯周炎が原因でかかりつけ歯科医院にて抜歯となりましたが,上の顎の骨がやせてしまい骨の量が少なく,インプラントは不可能と診断された患者様です.
抜歯後は入れ歯を使用している模様ですが,違和感が強く,インプラント治療を希望され治療を担当させて頂きました.
奥歯を失うと患者様の生活の質を著しく低下させてしまいます.
治療前
60歳代女性
依頼内容:2,3年前に,右上567番目の奥歯が歯の根っこの歯周炎が原因で痛み,かかりつけ歯科医院で抜歯となった.抜歯後は入れ歯を作ってもらったが,違和感が強く使用できない.インプラントをしたいが,骨の高さが少ないためインプラントは不可能と診断された.可能であればインプラントをしたい.
歯の根っこの歯周炎(根尖性歯周炎)が原因で,右上の前から5,6,7番目の奥歯を抜歯治療され,欠損している状態です.
患者様は取り外しの入れ歯を使用されているようですが,違和感が強く,インプラントをしたい希望がありました.
前医では,上顎の骨が不足しているためインプラントは不可能と診断されましたが,患者様はインプラント治療を強く希望され,骨造成治療について希望をされご紹介をいただきました.
十分な術前の診査・診断を行ったところ,「骨」を作る骨造成治療を適応すれば患者様の希望通りインプラント治療は対応可能と判断しました.
どのように対応したかみていきましょう.
治療中
CTでシュミレーションを行なったところ,上の顎の骨はやせてしまい,鼻の穴と通じる上顎洞(副鼻腔)という空洞までの骨の厚みが非常に少ない状況が予測されました.
骨の厚みがないとインプラントを入れた際に上顎洞に突き抜けてしまい,インプラントが感染してしまい蓄膿症などが発症してしまいます.
今回は,「骨」を作る骨造成治療を適応し,インプラント治療を行いました.
術式は,サイナスリフトとGBR法という骨造成術を併用しました.
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)は,上顎洞底部にある一層の上顎洞粘膜を外科的器具を用いて持ち上げ、空いた隙間に人工骨(骨に置き換わる顆粒)をつめ、骨を作る方法です。
GBR法は骨の足りない部分に人工骨を添加し,しっかりと骨を作ることのできる溶けない(非吸収性)チタン性の膜で被覆する術式です。
歯ぐきを切開し骨を露出したところ,予想通り抜歯をした所の骨は凹んでいました.
まず上顎洞が存在する部分に横から骨を削除してアプローチし,上顎洞の粘膜が裂けたり穴が開かないように慎重に粘膜を剥離していきました.
トラブルなくスムーズに上顎洞粘膜を持ち上げることができました.
空いた隙間に人工骨をつめ,最終的な被せ物の位置関係を考えてインプラントを入れた状態ですが,骨が薄くインプラントが部分的に露出しています.
ここから足りない部分に人工骨を丁寧に補い,メンブレンという人工の膜で保護していきます.
今回は骨の凹みが大きかったため,しっかりと骨を作ることのできる溶けない(非吸収性)チタン性の膜を使用した術式を行いました.
十分に粘膜を伸ばして,確実にかつ丁寧に縫合し,完全に傷口を閉鎖し手術を終了しました.
治療後
インプラント埋入手術+骨造成手術を行なった後,インプラント2次手術+歯ぐきの形成手術を行い,セラミッククラウンで治療しました
※患者様にご説明し,症例提示の同意をいただいた上で掲載しております.
リスク
手術後,痛みや違和感・出血・腫れなどが出る可能性があります.
インプラント治療は継続的なメインテナンスが不十分な場合,インプラントの歯周病(インプラント周囲炎)になるリスクが上がります.担当医からの注意事項説明を充分に理解して頂くようお願いします.
治療期間
約8ヶ月
治療費用
約¥200,000(税別)
費用内訳
●サイナスリフト:¥200,000 /1ブロック(税別)
監修者情報
玉岡丈二 ジョージ歯科口腔外科 院長
歯科医師。医学博士。日本口腔インプラント学会専門医。日本口腔外科学会認定医。
「医学と歯学を繋ぐ」と「インプラント」を専門とし、兵庫医科大学にて医学博士号を取得。兵庫医科大学歯科口腔外科学講座助教を経て、専門医として口腔領域の多岐にわたる手術を担当。2023年ジョージ歯科口腔外科を開院し、「まっすぐに」向き合う医療を志す。
著書・論文に『「人生100年時代」 のインプラント治療の考えかた』『口腔インプラント医が知っておくべき骨吸収抑制薬の知識(日口腔インプラント誌2019)』等。